ネット上で誰かの名誉を毀損するような投稿をしてしまうことがあります。完全に害意を持って書き込んでいる場合もあれば、冗談のつもりで書き込んだら相手が本気に受け止めてしまっていたり、書き込みがどんどん拡散されて思わぬ方向に被害が拡大してしまったりといったことがあるかもしれません。

インターネットは不特定多数の人が自由に閲覧できるものですし、誰が見ているかわかりません。その特性上ネット上に書かれたことはどこまでも広がってしまう恐れがあります。TwitterなどのSNSでフォロワーが少ないから誰も見ていないだろうと思って気軽に書いたことが、一気に数万人に拡散されてネットニュースになってしまったというようなことも起こり得ます。

そして、気がついたらプロバイダから「発信者情報開示請求に関する意見照会」という書面が届いて慌てた…という人の相談がネット上でも多く寄せられています。

書き込んだ投稿が相手にとって名誉毀損やプライバシー侵害になり、相手が損害を被ってしまったとき、被害を受けた相手方が投稿の発信者を特定するために発信者情報開示請求を行ない、意見照会書が自分の手元に届いた時にはどう対処すればいいのか。
意見照会書の書き方を含めて解説します。

発信者情報開示請求の意見照会書とは

発信者の個人情報を被害者に開示してよいかの確認書類

インターネット上で、名指しで「あいつはバカだ」「裏で援交している」などと書き込んでしまい、書き込まれた相手方がそれを名誉毀損など何らかの権利を侵害されたと感じて、発信者を特定するためにプロバイダに対して発信者情報開示請求を行うことがあります。

そうすると、発信者情報開示請求をされたプロバイダから後日発信者情報開示請求書の意見照会書が届きます。意見照会書とは、「あなたの個人情報を『権利を侵害されたと考えている人』に対して開示していいですか?」という内容です。

発信者情報開示請求が認められれば、書き込みを行なった発信者の氏名や住所、メールアドレスなどの個人情報が相手に開示されます。この情報はとても重大なプライバシーに関わる情報のため、開示にあたって発信者本人にも反論の余地を残しているのです。

意見照会書は裁判になった時の資料にも使われる

発信者情報開示請求は、プロバイダに対して行われる場合と、情報開示訴訟として裁判所に対して行われる場合がありますが、発信者からの意見照会書は訴訟の際に資料として用いられます。

発信者情報開示請求書は被害者側が「なんの権利を侵害されているか」「どんな損害を被っているか」などを詳しく書いて、投稿された書き込みが名誉毀損に当たることを主張するものです。一方意見照会書は、発信者側が「この書き込みは権利の侵害には当たらない」「正当性がある」「よって情報開示には同意しない」といったことを主張するためのものです。

発信者情報開示請求の裏で被害者が準備していること

そもそも発信者情報開示請求が行われているのには理由があります。

名誉毀損にあたる書き込みがされたとき、それ以上被害が拡大しないようにと考えれば投稿の削除を行えばいいだけのこと。投稿削除の手順としては、プロバイダに対して削除要請をするだけなのでわざわざ発信者の個人情報を開示してもらう必要はありません。

しかしあえて発信者情報開示請求を行なっている裏には、被害者がこんなことを考えている可能性があります。

名誉毀損罪で刑事告訴する準備をしている

誹謗中傷の書き込みがされたせいで自分の社会的評価が下がった、名誉を毀損されたとして、刑法上の名誉毀損罪(刑法230条)で発信者を刑事告訴し、起訴して刑事的責任を負わせたいと考えている可能性があります。

刑事告訴するためには発信者を特定しなければなりませんので、発信者情報開示請求をしていることが考えられます。

刑事告訴されたらどうなる?

名誉毀損罪で有罪が確定すれば、3年以下の懲役若しくは禁錮、または50万円以下の罰金刑が課されます。有罪が確定するまでには逮捕、起訴という流れになりますので、警察や検察に身柄を拘束されて取り調べを受けることになります。

取り調べの結果によっては、起訴されるまでに最大20日身柄を拘束されてしまう可能性もあります(これを勾留と言います)。その後起訴されればさらに裁判に出席しなければなりません。社会人であれば、仕事に重大な影響が出てしまうことは容易に想像がつきます。

検察は99%以上、ほぼ確実に有罪であると思えない事件については起訴しないため、もしも起訴された場合はほぼ確実に有罪になることになります。有罪になれば先ほど書いた通り、3年以下の懲役若しくは禁錮、または50万円以下の罰金刑となります。

初犯であれば執行猶予がつく可能性もありますが、どちらにせよ前科がつくことになります。社会的な損失は計り知れません。

損害賠償や慰謝料を請求する準備がある

被害者が発信者情報開示請求を行なっている理由としてもう一つ考えられるのが、名誉毀損による不法行為を理由とした損害賠償や慰謝料請求の準備です。被害者が名誉毀損によって精神的損害や財産的損害を受けているとき、その損害は加害者に対して補填を請求することができます。

名誉毀損は犯罪として刑事的責任を追及することもできますが、損害賠償のように民事的に責任を追及することもできます。中には、刑事告訴と損害賠償請求を合わせて考えているケースもあります。

損害賠償や慰謝料は訴訟を起こして請求してくることもありますし、まずは内容証明郵便などを使って裁判外で請求してくることもあります。どちらにせよ、被害者側に発信者情報を特定されてこのような請求がきた場合には放置することは得策ではありません。何らかの対応をしなければならなくなります。

発信者情報開示請求訴訟を起こされた時の3つの対策法

プロバイダから送られてきた発信者情報開示請求に関する意見照会は、情報開示に同意するか不同意かをプロバイダに対して回答しなければなりません。

発信者情報開示がされた時、開示される情報は極めてブライベートな情報です。発信者の重大なプライバシーを侵害することにつながるため、発信者情報開示請求がされたとしてもプロバイダ側は開示には慎重な対応を取ります。不同意として意見書を返送すれば、情報が開示されることはありません。

しかし発信者情報開示請求訴訟の場合は別です。情報開示請求訴訟で被害者側が勝訴し、開示請求を認める判決が出れば、発信者が開示に同意するしないに関わらず被害者側に発信者情報は開示されてしまいます。

発信者情報開示請求訴訟の対策としてどんなことに注意すればいいのでしょうか?

不同意にするだけでは不十分

そうなることを防ぐためには、自身の書き込みの正当性を主張しなければなりません。単に「不同意」とだけ記載した意見書を返送するのではなく、不同意とする具体的な理由や書き込みが名誉毀損に当たらないと考える証拠などを添付して返送する必要があります。

ここでポイントとなるのが、名誉毀損の違法性をなくす要件です。この要件に当てはまれば、たとえ書き込み自体が名誉毀損に当たったとしても違法性がないものとして扱われます。

名誉毀損の違法性却要件

名誉毀損となる投稿について違法性が阻却される要件は真実相当性や公益性と言われます。具体的には以下のように考えられています。

  • 公共の利害に関する書き込みであること
  • 公益を図る目的で書き込みしたこと
  • 書き込みが真実であるか、そう信じることに対して相当な理由があること

これは刑法230条の2で定められている要件ですが、もしも書き込みがこの要件にあたるならば、発信者情報開示請求訴訟ですら被害者側の開示請求が認められることは非常に難しくなります。裁判外で発信者情報開示請求が認められる確率はもっと下がります。意見照会書はこの点に注意して書くべきです。

意見照会書に回答して返送する際には、理由をしっかりと書くことはもちろん、理由を裏付ける証拠も添付しておくとなお説得力が増します。

意見照会書の返送期限を守る

プロバイダ責任制限法4条には、発信者情報開示請求の反論の期限は7日と定められています。しかし、一般的には2週間前後まで期限が延長されていることも多くなっています。プロバイダごとに具体的な期限設定が異なるので、プロバイダが定めた期限に従ってください。

ただ、この期限を過ぎても意見照会書を返送しなかった場合には、被害者側が情報開示を確実に行うために情報開示請求訴訟手続きに入る可能性があります。裁判外の請求だったからといって回答を放置するのは得策ではありません。

誹謗中傷投稿で意見照会が届いた時らまずチェックすること

プロバイダから意見照会書が届いた時、まずチェックしておきたいことをまとめました。発信者情報開示請求はその後に刑事告訴や損害賠償請求訴訟などが控えていることが多いため、早い段階で弁護士に相談することを強くお勧めします。

裁判外の手続きか、訴訟手続きか

その発信者情報開示請求が裁判外の手続きで行われているのか、それとも発信者情報開示請求訴訟手続きなのかによって対応の仕方が変わりますので、ここはチェックしましょう。訴訟手続きの場合は迅速な対応が必要です。

該当の書き込みが本当に名誉毀損と言えるのか

発信者情報開示請求の根拠となっている名誉毀損の書き込みが本当に名誉を毀損していると言えるのか、違法性がないのではないか、などの判断をする必要があります。
発信者情報開示請求をしている人の中には、書き込みに過剰に反応しているケースもあります。また、法律的には問題がない書き込みでも自分の被害感情を満足させるために情報開示請求をしているケースも考えられます。

プロバイダ責任制限法によって発信者情報開示請求ができる要件はある程度厳格に定められているため、一次的な選別はプロバイダが行います。しかし発信者側でもしっかりと確認しておく必要があります。

また、書き込みが名誉毀損にあたって被害者が精神的苦痛や財産的苦痛などを被ったと主張してきたとはいえ、発信者はその書き込みが正当なものであると考えているケースもあります。
名誉毀損に当たるかどうかの判断を的確に下すのは難しいものです。判断に迷ったら、法律の専門家である弁護士に相談してください。

ネット誹謗中傷による名誉毀損対応を弁護士に依頼する3つのメリット

名誉毀損にあたるかどうかの判断ができる

例えば過去に詐欺の被害にあった人が、加害者がSNS上で自分にしたことと同じようなことをして詐欺を働こうとしていることがわかったため、「この人は過去に詐欺を働いたことがある」とSNSやブログなどに投稿したというようなとき、名誉毀損と言えるのでしょうか。

形式上は名誉毀損に当たったとしても、公益を図る目的がある・書き込みが真実であるという場合は違法ではなくなります。とすれば、今回のケースは名誉毀損は成立せず、発信者情報開示請求にも応じる義務はないと言えそうです。しかし、実際にはその書き込みが名誉毀損に当たるかどうかを法律の知識があまりない人が判断することは非常に難しいことです。

その点弁護士であれば、法律の知識だけでなく経験も豊富ですのでより的確な判断が可能です。

反論の段階から法的に準備できる

これまで見てきたように、発信者情報開示請求は慰謝料請求や刑事告訴の準備として行われます。そうするならば、発信者情報開示請求が裁判外の手続きであれ訴訟手続きであれ、意見照会書を作成する段階から将来的な訴訟に備えることができます。
意見照会書をしっかりと作成することは、自分の権利を守ることにもつながります。

本人の代理人として全てを代行してくれる

発信者情報開示請求の意見照会書が届いたら、プロバイダが指定した期日までに意見照会書を返送しなければなりませんが、その期限は7日から、長くても2週間程度となっています。つまり、この間に名誉毀損と主張されている書き込みに正当性があることなどを主張できるように準備しなければなりません。

大抵の場合は、本人にとってはいきなりのタイミングで意見照会書が届くことになるため、意見照会書が届いてから慌ててそれがどういったものなのかを調べて対策を練るというようなことになります。しかし社会人など日中忙しくしている人にとってはしっかりと対策を立てることは難しいものです。

弁護士に依頼することで、その手間は大幅に短縮することができます。また、その後の訴訟や示談交渉なども代理人として対応を任せることができますので、早い段階から弁護士に相談することをお勧めします。