真っ暗い部屋でノートパソコンを開いて2ちゃんねるで悪口を書き込んでいる男性

2ch(2ちゃんねる)とは、匿名で書き込みができる掲示板です。途中で分裂し、今では「2ch.net」と「2ch.sc」という2つのサイトになっています。

かつては利用者が1,100万人を超えていた超大型サイトで、2chにないネタはないとまで言われていました。今でもその影響力は大きく、時に犯罪予告が2chで行われることも。また、匿名で自由に投稿ができることから、著名人だけではなく身の回りの個人や法人に対して名指しで誹謗中傷を行う書き込みも多発しています。

もしも2chに自分が誹謗中傷を受けている投稿を見つけたら、まずはその投稿を削除することが先決です。その上で誹謗中傷を投稿した人物を特定する「発信者情報開示請求」の方法について今回は解説します。

2ch上に書き込みした人物を特定する目的

2chで誹謗中傷の書き込みを投稿されてしまったら、先ほども書いた通りまず取るべき対策としてはその書き込みの削除です。投稿削除は2ちゃんねるのサイト管理人に対して行うため、削除だけなら発信者を特定する必要はありません

しかし、もしも以下のようなことをしたいと考えているのであれば発信者を特定する必要があります。

  • 警察に刑事告訴
  • 本人に民事訴訟や慰謝料請求などの示談交渉

警察に刑事告訴する

2ch上に投稿された誹謗中傷がときに名誉毀損罪や業務妨害罪、リベンジポルノ防止法違反など、何らかの犯罪を構成することは少なくありません。その場合は警察に相談し、被害届や告訴状を提出して発信者に刑事的責任を負わせるという選択肢もあります。

誹謗中傷の投稿を削除依頼して、削除されてもまた新たに誹謗中傷の投稿をしてくる発信者もいます。 このような人には投稿削除で対応するだけでは不十分で、徹底的に誹謗中傷の被害をなくしたい、誹謗中傷を繰り返す発信者に対して「2chに誹謗中傷の書き込みを行うことは犯罪になり逮捕される可能性がある」ということを知らしめたいときには刑事告訴という手段は有効です。

刑事告訴については発信者の氏名などの個人情報を特定する必要があります。ちなみに刑事告訴の具体的な方法については(リンク:「ネットの誹謗中傷を名誉毀損や侮辱罪で告訴する手続を徹底解説」を参照してください。

本人に対し、民事訴訟や慰謝料請求などの示談交渉をする

刑事告訴までは考えていないが、誹謗中傷によって精神的苦痛を被ったので慰謝料を請求したい・直接話し合って解決したいといったような場合には、民事法的措置をとることになります。慰謝料や損害賠償請求訴訟を起こしたり、示談交渉を行ったりというのがその方法です。

慰謝料請求についても発信者個人に対して行うことになるため、発信者本人を特定する必要があります。

2chの書き込みを特定する「発信者情報開示請求」とは

発信者個人を特定するためには、プロバイダに対して「発信者情報開示請求」を行います。

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求とは、プロバイダに対して利用者の情報を開示してほしいと求めることです。発信者情報開示請求が認められる要件やプロバイダの責任、どんな情報が開示請求の対象になるのかなどについては「プロバイダ責任制限法」にその規定があります。

具体的な手順としては、まず2chに対して誹謗中傷を行なった発信者のIPアドレス開示請求をし、その後インターネットサービスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行うことになります。

発信者情報開示請求の具体的な方法については(リンク:「誹謗中傷の発信者を訴える!発信者開示請求書の書き方基礎講座」を参照してください。

個人のアドレス、住所…何を特定できる?

発信者情報開示請求の際にはどんな情報の公開を求めることができるのでしょうか?これについてはプロバイダ責任制限法4条およびテレコムセンターが提供している情報開示請求書を参照してください。具体的には以下の情報の開示を求めることができます。

(以下引用:サイトはhttp://www.isplaw.jp/d_form.pdf) 1.発信者の氏名又は名称 2.発信者の住所 3.発信者の電子メールアドレス 4.発信者が侵害情報を流通させた際の、当該発信者の IP アドレス及び当該 IPアドレスと組み合わされたポート番号(注 5) 5. 侵害情報に係る携帯電話端末等からのインターネット接続サービス利用者識別符号(注5) 6. 侵害情報に係るSIMカード識別番号のうち、携帯電話端末 等からのインターネット接続サービスにより送信されたもの(注5) 7.4ないし6から侵害情報が送信された年月日及び時刻

IPアドレスの開示請求では4から7の情報について開示請求することになりますが、その後にインターネットサービスプロバイダに対して情報開示請求を行う際には1から3の情報、すなわち、発信者の氏名や住所、メールアドレスについて開示請求をすることができます。2ちゃんねるに対しては、4から7の情報開示を請求します。

なお、ここに書かれた項目以外のことは開示請求ができませんので注意してください。例えば勤務先名称や住所、プロバイダの契約開始年月などは開示が認められません。

2ちゃんねるの書き込みを特定する「発信者情報開示」の問題点

個人的な情報開示請求が認められにくいというのは、2ch相手のみならず他のSNSや無料ブログでもほぼ同様です。しかしそのほかにも2chならではの問題点も指摘されています。具体的に見ていきましょう。

海外法人で日本に事業所がない

2chは、2ch.netと2ch.scのどちらのサイトも運営会社が海外法人です。2ch.netはフィリピン法人の「Race Queen Inc.」が運営会社となっており、2ch.scはシンガポールの「PACKET MONSTER INC.PTE.LTD.」という会社が運営しています。

海外法人であることの問題点は、法人相手に仮処分や訴訟を起こす時に生じます。 法人に対して仮処分や訴訟を提起する場合には、法人登記の全部事項証明書を取得しなければなりません。これは国内外の法人問わず、日本で法人登記している法人については全てです。しかし日本で法人登記をしていない場合には、当然ですがこの全部事項証明書がありません。

そこで法人登記の全部事項証明書に相当する書類を法人の所在国から取り寄せる必要があるのです。これを「資格証明書」と呼びます。2ちゃんねるの運営会社はどちらも日本国内に法人登記をしていないため、それぞれに対して資格証明書を請求する必要があります。請求の手順は国によって異なります。

基本的に裁判上の手続きが必要

発信者情報開示請求が認められると、発信者の氏名や住所などが開示されます。しかし発信者側にとってみれば、知らない相手に対して自分の本名や居住地などが知られてしまうことになります。

2chという掲示板を利用するとき、ほとんどすべての人は匿名で書き込みを行うもの。氏名や住所は「みだりに公開されることを欲しない私生活上の事柄」すなわちプライバシーに関する情報にあたります。

そのため、誹謗中傷の被害者が受けた権利の侵害と、発信者のプライバシー権が対立するという構図が生まれます。また、発信者には「表現の自由」が保障されているため、表現の自由と被害者の権利侵害との対立という構図も生まれることになります。

このような理由から、2chやインターネットサービスプロバイダ側は発信者の情報を開示することについては慎重です。 情報開示請求の方法としては①テレコムセンターの書式を使って個人的に2ちゃんねる管理人に直接請求する方法と②裁判上で開示請求訴訟を行う方法がありますが、もし①の個人的に発信者情報開示請求する方法をとったとしても、開示が認められるケースはほとんどないと言っても過言ではありません。

これは2chに対してIPアドレス開示請求を行う場合も同じです。実際に2ch.scのガイドラインにおいても(以下引用:サイトはhttp://info.2ch.sc/guide/adv.html#saku_guide) 削除対象投稿者のIP・ホスト情報については、警察や裁判所からの依頼などでないかぎりお教えしません。 と明記されています。

そのため、IPアドレス開示請求については最初から裁判上の手続きが必要です。裁判上の手続きとしては、2chに対してはIPアドレス開示請求の仮処分の申し立て、インターネットサービスプロバイダに対しては発信者情報開示請求訴訟を行うという流れになります。

ちなみにこれは2ch.scのガイドラインですので、もう一つの「2ch.net」では対応が異なる場合があります。しかし、2ch.netはIP情報開示請求に関してはガイドラインや窓口を公開していません。そのため裁判外での要求に応じるかについては2ch.netに問い合わせをする必要があります。

法人は基本放置? 2ch側の対応の違い

誹謗中傷を受けるのはなにも個人だけではありません。「この会社は詐欺を働いている」「この企業はブラックだ」など、法人も誹謗中傷を受けることは珍しいことではないのです。

個人であれ法人であれ、誹謗中傷の書き込みが2chにされた場合に受ける被害は同じです。むしろ知名度が高い法人の方が拡散されやすいため、知名度がない個人に比べるとその被害度合いは大きいと言えるでしょう。

しかし2chでは、法人に対する誹謗中傷は基本的に放置されます。2chには2ch.netと2ch.scの2種類がありますが、2ch.scでは「(以下引用:URLはhttp://info.2ch.sc/guide/adv.html#saku_guide)法人・団体については、カテゴリによって扱いが違いますが、原則として放置であるとご理解ください。 」 と明記されています。

2ch.netについてはそのような記載はありませんが、2ch.netでは法人に対する誹謗中傷に対応したとしても2ch.scでは対応されないのであれば片手落ちです。 このように、法人に対する誹謗中傷の場合は、個人に対する誹謗中傷の対応に比べてハードルが上がってしまうので注意してください。基本的にはIPアドレス情報開示請求の仮処分命令を申し立てることになるでしょう。

2chの書き込みに対する発信者情報開示請求の流れ

個人で発信者情報開示請求する手順については「(リンク:)誹謗中傷の発信者を訴える!発信者開示請求書の書き方基礎講座」に詳しく記載しているので参考にしてください。

ただ、先ほども書いた通り、2ちゃんねるに対しては最初から情報開示の仮処分命令申し立てを行なった方が話が早いです。ここでは仮処分の申し立てについて流れを説明します。

まずは資格証明書を取得する

2ch.netと2ch.sc、ともに海外法人で日本では法人登記をしていないため、まずは運営会社がある国に資格証明書を請求する必要があります。

2ch.scはシンガポールの「PACKET MONSTER INC.PTE.LTD.」が運営していますので、シンガポールに対して資格証明書の請求を行います。シンガポールでは、商業登記については会計企業規制庁(ACRA)が管理していて、オンライン上で請求することが可能なので便利です。

一方2ch.netはフィリピン法人の「Race Queen Inc.」が運営会社なので、フィリピンに対して資格証明書の請求を行いますが、フィリピン法人についてはオンライン上で資格証明書の請求ができません。

また、郵送で資格証明書を日本に送ってもらうこともできません。そのため、2ch.netの資格証明書を取得するためには、代行業者に依頼する必要があります。

【注意】管轄の裁判所

資格証明書が取得できれば、いよいよ裁判所に「IPアドレス開示請求」に関する仮処分命令を申し立てることになります。仮処分命令は管轄の裁判所に申し立てますが、海外法人の場合管轄の裁判所はどこになるのでしょうか?

裁判所の管轄については民事訴訟法4条に規定されています。原則としては被告となる法人の住所(事業所)になりますが、国内に住所を持たない場合は代表者や業務担当者の住所を管轄する裁判所に行います。

2ch.scの場合は「ひろゆき」さんこと西村博之さんが運営に関わっていると考えられており、西村さんの住所を管轄している裁判所が管轄とされています。

一方2ch.netの場合ですが、こちらも日本に事業所はありません。また、西村博之さんのような業務担当者もいないと考えられているため、ここから管轄を割り出すことはできません。

この場合は「日本の裁判所」に管轄が認められます。具体的には東京地方裁判所に管轄が認められることになります(民事訴訟法3条の3、6条の2)

2ch.scに対してIPアドレス情報開示請求

次にIPアドレス情報開示請求に移りますが、ここからは2ch.scと2ch.netで分けてみていきましょう。まずは2ch.scに対するIPアドレス情報開示請求の方法ですが、削除依頼と同様に掲示板に書き込む形で情報開示請求を行います。

2ch.scの事務所掲示板に入り、「情報開示を求めるスレ」を立てます。タイトルには管轄裁判所と事件番号も記載します。具体的な記載方法については、過去のスレを参照してください。情報開示請求のスレが立つと担当者が対応してくれますが、理由によっては開示請求に応じないこともあります。

2ch.scは削除依頼や開示請求については掲示板でのみ請求が可能となっています。当事者以外にも全ての人が閲覧できる状態になっているので、誹謗中傷の二次被害が起きないように書き込み内容には注意してください。

2ch.netに対してIPアドレス情報開示請求

2ch.netでは開示請求方法が明示されていません。そのため、削除依頼の窓口に問い合わせることになります。削除依頼の場合はメールに必要事項を記載して送信する形ですので、このアドレス(meiyokison@racequeen.ph)に開示請求に関する問い合わせを行なってください。

IPアドレスがわかったら、次はインターネットプロバイダに対して発信者情報開示請求を行う手順に移ります。

2ちゃんねるの書き込みを特定するなら弁護士に相談

2ちゃんねるは日本最大級の掲示板であることから、誹謗中傷の書き込みがされた時に何人の人の目に止まるかわかりません。さらにはミラーサイトを乱立されて、その内容を拡散されることも考えられます。

そのため、2ちゃんねるでの誹謗中傷はできるだけ早く対処しなければなりません。投稿削除依頼に加えて発信者を特定するために発信者情報開示請求を行う場合は、2ちゃんねるの運営会社が海外法人であることを踏まえて対策を立てる必要があります。

また、基本的にIPアドレス開示請求は裁判所からの仮処分命令や警察からの依頼にのみ応じるというスタンスを取っているため、最初から弁護士に依頼して対応を一任するというのが解決への近道と言えるでしょう。

法人の場合は、2ch.scが「誹謗中傷は原則放置」というスタンスを取っていることもあり、個人が誹謗中傷を受ける場合に比べて対応は厳しいといえ、早々に弁護士を介入させておく必要があるでしょう。個人のみならず法人が誹謗中傷によってなんらかの権利を侵害されている場合も、早急に弁護士にご相談ください。