ネット上で誹謗中傷を受けたときは、対策として、まずは投稿を削除する・次に誹謗中傷を書き込んだ人を特定するという方法をとるのが一般的です。

最初は、個人的にサイト管理人に連絡を取って投稿削除などを求めるのが一般的ですが、個人的な要請にはなかなか対応してもらえないことも少なくありません。

そんな時には、サイトの管理人などに対して、裁判所の仮処分命令を申し立てたり、訴訟の手続きをしたりすることで、より強力に対処を求めていくことになります。

しかし、サイトの管理人が日本の会社であればまだいいのですが、海外に会社があることが多く、手続きが複雑化しています。

そこで今回は、仮処分や訴訟の相手方となるサイト管理人が海外法人の場合の手続きについてまとめました。

海外法人の問題点

基本的に、無料ブログやSNSのサイト管理を行う会社は日本国内の会社が多いものです。仮処分や訴訟の相手方が日本法人の場合は、特に何の問題もありません。

裁判所に出向いて、普通に仮処分や訴訟の手続きをすればいいだけです。

しかし、相手方となる運営会社が海外法人のことも少なくありません。

例えば、日本最大の掲示板として有名な「2ちゃんねる」は、現在は分裂してシンガポールとフィリピンに運営会社があります。FacebookやTwitterも同じく、海外に会社があります。

そうすると、仮処分命令の申し立てや訴訟を起こすときには、海外法人を相手にしなければなりません。一体どんなことが問題となるのでしょうか?

海外法人でも日本に拠点があればいい

TwitterやFacebookは、もともと日本ではなく、海外で誕生し、それが日本に入ってきて急速に広まりました。日本での利用者は多いため、FacebookやTwitterは日本にも支社を持っています。

そうすれば、例えばTwitterに対して削除の仮処分命令の申し立てをしたいなら、日本のTwitter社を相手にすればいいのではないかと思いますよね。

しかし、日本に支社があったからといって、必ずしもそこを相手に仮処分の申し立てができるわけではありません。

ちなみに、twitter社の場合も、日本支社を相手に仮処分の申し立てはできません。

日本にある支社が権限を持っていないことが多い

これは何が問題かというと、日本のTwitter社には誹謗中傷の書き込みがされた時に対応できる権限がないのです。

権限がなければ、誹謗中傷の投稿の削除やアカウントの凍結、発信者の情報開示なども期待できません。 これはFacebookも同じです。

そして、有名な2ちゃんねるですが、2ちゃんねるにはもともと日本の法人自体がありません。

このように、もしも仮処分や訴訟の相手方が海外法人の場合は、まずは日本にも支社があるかどうか、支社があった場合は、法的請求に対応できる権限を持っているかを確認することが必要です。

仮処分や訴訟が海外法人だとどんな違いがある?

書類が異なる、手間がかかる

日本国内の法人を相手に仮処分などを行う時には、その会社の代表が誰かを明確にするためにも、商業登記簿謄本や登記事項証明書が必要です。

しかし、海外法人で日本に支社や支店がない場合は、そもそも日本で商業登記をしていませんので、責任者を知るためには海外法人の登記簿謄本にあたる書類を取り寄せなければなりません。

これが、「資格証明書」と呼ばれるものです。

このように、日本国内の会社に対して仮処分や訴訟を起こすときとは書類が違うのです。

また、資格証明書は当然現地の言葉で発行されるので、日本の裁判所に提出するときには日本語の翻訳文をつけなければなりません。

翻訳文を自分でさくせいできればいいですが、一般的には専門家に依頼することになります。

時間がかかる

仮処分の最大のメリットは「対応が早い」ということです。通常の訴訟であれば、判決が下されるまでに数ヶ月から長いと数年かかることもあります。

これは、証拠を提出したり、証人尋問を行ったりと、訴訟の手続き自体が、もともと時間がかかるものだからです。

一方仮処分は「早急に何らかの対策を立てなければ、被害が抑えられない」というような緊急時の暫定処理のための処分です。

そのため、早ければ、申し立てから数週間で仮処分命令が下されることも珍しくありません。

しかし、海外法人が相手の場合は、審尋の日程の調整や両者のやりとりなどにどうしても時間がかかってしまいます。その結果、仮処分命令が出るまでにも相当の時間がかかってしまうのです。

管轄の違いに注意

海外法人を相手に仮処分を申し立てたり、訴訟を起こしたりするときには、管轄の裁判所がどこになるのかを押さえておく必要があります。

誹謗中傷を受けたときの法的手続きとしては、必要に応じて削除の仮処分やIPアドレス開示の仮処分、発信者情報開示請求訴訟という3種類の手続きが考えられます。

このうち、削除の仮処分については、誹謗中傷の投稿の削除という不法行為に基づく手続きになるため、裁判管轄は「不法行為が行われた場所」を管轄している裁判所ということになります。

しかし、ネット上で誹謗中傷の被害を受けたときには、傷害や暴行などのように物理的な場所を特定できません。

この場合は、被害者がパソコンを開いて誹謗中傷の書き込みを見た場所が「不法行為が行われた場所」ということになります。

一般的には、被害者の自宅を管轄している裁判所ということになります。

一方で、発信者情報開示請求は「不法行為が行われた」というわけではありません。そのため、この場合は東京都が管轄になります(民事訴訟法規則6条の2、民事訴訟法10条)。

自分が住んでいるところが東京都であれば、投稿削除要請と発信者開示請求の裁判管轄は同じになりますが、東京都以外に住んでいるときには管轄がそれぞれ違いますので、この点も注意が必要です。

海外法人に仮処分を申立てるときには弁護士に依頼

ツイッターやFacebook、2ちゃんねるなどで誹謗中傷を受けることは珍しくありません。

中には、放置しても被害が止まず、具体的な対処が必要になることもあります。

最初は被害者個人がサイトの管理人に対して削除要請などを行うのが一般的ですが、なかなかサイト管理者が対応してくれないことも少なくありません。

裁判所の仮処分や訴訟などの手続きをとることで、より効果的にサイト管理人に削除要請などができることになります。

しかし、手続きはもちろん個人でもできないわけではありませんが、特に相手が海外に籍を置く法人の場合は輪をかけて手続きが面倒になります。

ただでさえ仮処分や訴訟には法的知識が必要なのに、さらに訴える相手が海外の会社となれば、さらに専門的な知識が求められます。

さらに、日本の法人を相手にする場合に比べて時間がかかります。

誹謗中傷の被害は、できるだけ早い段階で対処することが重要です。できれば、仮処分や訴訟の申し立ては弁護士に依頼することをお勧めします。