ベッドで裸で寝ている女性の姿を男性が隠し撮りしている

過去に交際していた人とトラブルになって、腹いせに裸の画像をSNSや掲示板などに投稿される「リベンジポルノ」という被害が頻発しています。

リベンジポルノはこれまでも大きな社会問題になってきました。ひどいものであれば、性行為を撮影した動画を流出されているケースもあります。

こういった被害の拡大を受け、平成26年11月には「リベンジポルノ法」と呼ばれる法律も施行され、リベンジポルノを取り締まる環境は徐々に整ってきています。

リベンジポルノの被害にあったときどう対処すればいいのか。リベンジポルノ法と合わせて解説します。

リベンジポルノとは

リベンジポルノとは、元交際相手(元カレ・カノ)や元配偶者(元夫・妻)が振られたりトラブルで別れたりした腹いせに相手の裸の画像や性行為の動画などをネットにばらまくことです。

被害者は10代などの若い女性が多く、恋人から「裸の画像を送って」と頼まれて断れずに撮影したものや、性行為を隠れて撮影されていたものなどが出回るケースが多くなっています。

顔が見える状態で裸の画像や性行為の動画などを不特定多数が見られるインターネット上に投稿されるため、その画像が誰なのかが知り合いであれば容易に特定できてしまいます。

そのため、家族や友人などにその画像が見られたり就職活動に影響したりする可能性もあります。また、面白がった人がどんどん拡散していってしまえば回収することは困難です。

「リベンジポルノ」の流出被害は多くの法的課題があった

リベンジポルノ法が制定される前は、リベンジポルノに法的に対処することは難しい部分がありました。

リベンジポルノは、動画や画像をSNSやブログなどにアップされることによって被害が拡大しますが、それまでは、プライバシー権の侵害や名誉毀損罪、わいせつ物頒布罪などの法律を当てはめて対処するしかありませんでした。

わいせつ物頒布罪での規制が難しいケースも

特定個人の裸の画像が流出した場合、その画像はわいせつ物にあたるため、刑法175条の「わいせつ物頒布罪」を適用して刑事事件として対処するケースもありました。

しかし、わいせつ物頒布罪は性的画像を不特定多数に頒布や陳列などをした人を処罰する犯罪で、同罪の保護法益は性道徳や性秩序の維持と考えられています。

そして、性道徳や性秩序を侵害したといえるためには、これまでの判例上は性器が写った画像や動画である必要があるとされています。

ですので、裸の画像をネットに流出・拡散された場合であっても、性器が写っていない、あるいは、性器の箇所にモザイク処理がされているような場合は、わいせつ物頒布罪を適用して、リベンジポルノを広くカバーすることは難しいものでした。

プライバシー権の侵害では犯罪にできない

リベンジポルノとして投稿される画像は、特定の人の裸などの画像です。これは「みだりに公開されることを欲しない」情報にあたるため、プライバシー権といえます。

そうするとプライバシー権の侵害を理由に投稿の削除や慰謝料の請求などを行う方法がありますが、プライバシー権の侵害は犯罪にはならないため、警察に被害届や告訴状を提出して捜査してもらったり罰してもらったりすることができません。

参考:ネット誹謗中傷・プライバシー権とは?侵害されたらどう対処する?

このように、犯罪にあたらない場合はなかなか抑止力が働かないという難点がありました。

名誉毀損罪を当てはめることは難しい

プライバシー権の侵害では犯罪が成立しないため、刑事告訴したい場合には名誉毀損罪(刑法230条)に当てはまる必要があります。 他人の裸の画像を不特定多数が閲覧できるようなところに流通することはその人の社会的評価を落とし、名誉を毀損したといえるため、リベンジポルノも名誉毀損罪に該当します。

しかし実際に名誉毀損罪に該当するかどうかを判断する警察官にとっては、単なる画像の拡散だけでは判断が難しいケースも多かったことも事実です。

というのは、従来の刑法では、人は服を脱げばみんな裸であるという考えを採っていたため、現場の警察もそれに従って犯罪として取り扱うことを躊躇ったわけです。

裸の画像や動画に添えて、例えば、「この女は雌豚だ」「誰とでも寝る女」などの個人を罵る言葉があれば、名誉毀損罪に該当することは明らかですので警察も動きやすかったのですが、ヌード写真だけでは名誉毀損罪で逮捕することは非常に難しかったのです。

※但し、最近の地裁レベルの判例では、裸の写真のみでも名誉毀損罪に該当するという判例が複数出てきており、リベンジポルノの流出は名誉毀損になるという考えが主流になりつつあります。

18歳未満なら児童ポルノ法で規制することが可能

リベンジポルノの被害者が18歳未満の児童であれば、児童ポルノ法によって加害者を摘発することが可能です。例えば18歳未満の児童に裸の画像を送らせる行為や性行為の画像をネットに流出させる行為は児童ポルノ法に違反します。

18歳未満に対するリベンジポルノは児童ポルノ法で規制することが可能だったため、18歳以上に対する被害よりも保護されやすいといえます。 ちなみに、個人的に楽しむ目的で18歳未満の児童の性的な画像をダウンロードする行為も児童ポルノ法に反する行為です。

リベンジポルノ法の基本を解説!被害者はどう守られる?

このように、リベンジポルノで実際に被害が生じても、既存の法律では対処が難しいことからリベンジポルノ法が平成26年11月に施行されました。

リベンジポルノ法は、正式名称を「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」と言います。それでは、リベンジポルノ法の特徴を見ていきましょう。

リベンジポルノ法の成立要件

まずはリベンジポルノ法でどんな行為が処罰の対象となるのかを確認しましょう。リベンジポルノ法3条において、リベンジポルノ法に違反する行為は以下のように定められています。

  • 第三者が撮影対象者を特定できる方法で
  • 電気通信回線を通じて
  • 私事性的画像記録を不特定多数に提供する

電気通信回線というのは、簡単にはインターネットのことを指します。簡単に説明すると、誰かが特定できる状態の裸やそれに準じる画像をインターネットに流出させ、不特定多数が閲覧できる状態に置いたときにリベンジポルノ法違反となるということです。 どのような画像が「私事性的画像」にあたるかについては、後ほど詳しく解説します。

罰則が設けられ、犯罪として対処できる

リベンジポルノの被害にあったとき、これまでであれば名誉毀損罪など他の犯罪に該当すれば警察に被害届や告訴状を提出して対応を求めることができました。しかし、リベンジポルノ法ではリベンジポルノに該当すれば「三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」の罰則が適用されます。

これは名誉毀損罪の罰則「3年以下の懲役若しくは禁錮または50万円以下の罰金」とほとんど同じ重さといえます。禁錮刑が制定されていない分、リベンジポルノ法の方が若干重い刑になっています。

罰則が設けられたことにより、抑止力も期待できますし、被害にあったときにも警察に対応を依頼しやすくなりました。リベンジポルノが犯罪として扱われるようになったことは大きいといえます。

処罰範囲が発信者以外にも広がった

リベンジポルノ法によって処罰の対象となるのは、不特定多数の人に画像を発信した人だけではありません。不特定多数の人に発信する意図を持っている人に対して画像を提供した人も処罰の対象になります。

例えば、個人LINEで特定の人の裸の画像や動画などを発信者に渡した人も罪に問われることになります。ただ、刑罰は若干軽くなり、「一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金」となっています。

プロバイダが発信者に負う損害賠償責任が軽くなった

誹謗中傷にあたる書き込みを投稿されたとき、それによって被害を受けた本人はプロバイダに対して投稿の削除依頼をすることができます。 投稿の削除依頼(送信防止措置と呼ばれます)を受けたプロバイダは、発信者に対して「投稿を削除していいか」という意思確認を行い、7日間返信がなければ、投稿を削除しても発信者に対して損害賠償を負いません。これはプロバイダ責任制限法で定められています。

しかしリベンジポルノに関しては、この7日が2日に短縮されました。すなわち、プロバイダは発信者に投稿削除の意思確認をして、2日待っても返信がなければ、その画像や動画を削除してもなんらの損害賠償責任を負わないことになりました。 ただし発信者情報開示請求に関しては変化はありませんので、注意してください。

参考:【ネット誹謗中傷対策】プロバイダ責任制限法をわかりやすく解説

リベンジポルノ法の「性的画像」とは何か

リベンジポルノ法では、「私事性的画像記録」の提供が処罰の対象となっていますが、私事性的画像記録とはどのようなものなのでしょうか? 私事性的画像記録はリベンジポルノ法の2条で詳しく定義されています。

リベンジポルノ法第2条

  • 一 性交又は性交類似行為に係る人の姿態
  • 二  他人が人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下この号及び次号において同じ。)を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  • 三  衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって、殊更に人の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

基本的には性行為そのものや、性器が露出・強調されていて、それを見た人の性欲を興奮・刺激する動画や画像については「私事性的画像記録」にあたると考えられます。 さきほど児童ポルノ法における性的画像の定義を書きましたが、児童ポルノ法に「18歳未満」という年齢制限があることを除けば、リベンジポルノ法と児童ポルノ法の「性的画像」の定義はほぼ同じです。

下着や水着の場合もリベンジポルノは成立する?

私事性的画像記録として「衣類の一部をつけない人の姿態」とありますが、恋人と海に行ったときに水着を着ていたときの写真が流出していたり、一緒にいるときに下着姿になっていたときの画像が流出した場合はリベンジポルノにあたるのでしょうか?

今のところ、単なる水着姿や下着姿の場合は「私事性的画像記録」には該当せず、リベンジポルノ法による規制は難しそうです。ただ、それが性器を強調しているものや性行為と連動しているものなどで、性欲を興奮・刺激するものであればリベンジポルノの対象になりえます。

性行為時の声や文字のデータもリベンジポルノといえるか

画像はないものの、性行為中の音声がSNSに投稿されたり、性行為中の状況を文字で投稿されたりしたとき、これもリベンジポルノ法は適用になりません。 リベンジポルノ法はあくまで動画や画像を対象にしているためです。ただし、ケースによっては名誉毀損などに該当する可能性はあります。

出演したアダルトビデオやグラビアの画像はリベンジポルノ?

プロのAV女優ではない素人がアダルトビデオに出演するケースは少なくありません。しかし出演している人の中には「できれば知り合いには出演を知られたくない」と考える人もいます。

そういった意思に反して、交際相手が出演していたアダルトビデオの画像をネットに流したり、出演者の身元が特定できるような情報を流したりすることはリベンジポルノには当たらないのでしょうか。

リベンジポルノにあたるのは基本的に「撮影対象者の同意がない」画像や動画です。撮影に同意があったとしても、ネットなどで公開されることに対して同意がなければリベンジポルノにあたると考えられています。

一方アダルトビデオやグラビア写真などは、本人が第三者に見られることを認識した上で撮影を許可したものとされるため、リベンジポルノにはあたらないとされています。

リベンジポルノという画像流出の被害に遭わないために

リベンジポルノの被害者の多くは10代の若い女性だと言われています。

社会経験が未熟であることから、あまり危機感を抱かずに自分の裸の写真を交際相手に送るケースもありますが、相手に強く要求された時に「断ったら振られるかもしれない」「裸の写真を送れば浮気されないかもしれない」といったように強迫観念にかられて断れずに裸の画像を相手に送るケースも多くあるようです。

しかし、リベンジポルノによる被害者はどんどん増えています。中には元交際相手がストーカー化し、SNSに相手の裸の画像を投稿するだけでは飽き足らず、女性を殺害するという痛ましい事件も起きました。

リベンジポルノは決して消すことのできない「デジタルタトゥー」とも言われます。毅然とした態度を保ち、絶対に裸の写真や性行為の動画などを相手に撮らせない、送らないことが大切です。

一度相手に渡したデータは、いつどんなことに使われるかわかりません。多くの人が「自分は大丈夫」「彼は信頼できるから」などと考えて、別れた後に被害に遭ってきました。リベンジポルノの危険性を十分認識して対処しましょう。

リベンジポルノの流出被害にあったときの3つの対策法

もしもリベンジポルノの被害に遭ってしまったら、どのような対策方法があるのでしょうか。万が一のときに備えて知っておくことは大切です。

1.画像の削除依頼

まずは画像を投稿した発信者本人、または投稿されたSNSやサイトの管理人に対して、画像を削除するよう依頼します。このとき、発信者本人が画像を削除したとしても、画像はすでに拡散している可能性があります。

しかしネット上ではリベンジポルノ画像を集めた悪質なブログや掲示板が乱立していますので、本当はそれらの全てに削除依頼をかけなければなりません。しかし、現実的に、自分の画像が投稿されているすべてのサイトを特定することはほぼ不可能です。

参考:ネットの誹謗中傷の書き込みを削除する7つの全手順を徹底解説!

2.リベンジポルノ法違反で刑事告訴

リベンジポルノ法に違反することを根拠に刑事罰を追求することも可能です。最寄りの警察署に被害届、または告訴状を提出し、警察に動いてもらいましょう。

リベンジポルノは親告罪となっていて、被害者の告訴がなければ犯人を起訴することができません。被害届を出しただけでは不十分なので、相手を起訴する意思が固まっているならば最初から告訴状を作成することが肝要です。

参考:ネットの誹謗中傷を名誉毀損や侮辱罪で告訴する手続を徹底解説

3.慰謝料などの民事責任の追及

刑事責任以外にも、精神的損害や財産的損害などが生じたとして慰謝料や損害賠償を請求するという手段もあります。発信者が特定できていれば、本人に直接内容証明郵便などを使って請求することもできますが、相手が応じない場合には訴訟を起こして慰謝料や損害賠償を請求するという方法もあります。

一方、発信者が特定できていない場合はまずプロバイダ等に対して発信者情報開示請求の手続きを行い、発信者を特定する必要がありますので注意してください。

参考:ネット誹謗中傷対策!名誉権やプライバシー権侵害で慰謝料請求の手順

参考:誹謗中傷の発信者を訴える!発信者開示請求書の書き方基礎講座)

リベンジポルノ被害の4つの相談先

1.警察に相談する

警察に相談することで、元恋人や元配偶者を逮捕して身柄を確保してもらうことができます。

逮捕すれば、ヌード画像や動画をネットに流すと脅されている場合ならそれを未然に防止することができますし、すでに流出させられた場合でも、加害者の手元にまだ他の画像等が残っていれば少なくともそれらがネットの世界に公表されることを防げます。

また、警察へ相談することにより、リベンジポルノ防止法のほかにも、名誉毀損罪、恐喝罪などでも捜査をしてもらえることが期待できます。

なお、リベンジポルノはインターネット上で行われる犯罪ですが、ネット犯罪は一般的な犯罪に比べて専門知識が必要です。

そのため、警視庁ではサイバー犯罪に特化した相談窓口を設けています。サイバー犯罪相談窓口は電話だけではなくメールでの相談も可能ですので、この窓口を利用するのも一つの方法です。

参考:各都道府県警察本部のサイバー犯罪相談窓口

2.弁護士に相談する

警察への相談は基本的には、ヌード画像を流出させた加害者を逮捕する方向で事を進めることが多いですが、それに対して弁護士に相談すると、極力穏便に解決する方針をとります。

リベンジポルノの画像や動画を流出させた元カレや元カノ、元夫や元妻がかなり逆恨みして興奮している状態なので、警察沙汰にしてあとから復讐されるのが怖いと不安な方や、大事にしたくないといった方はまずは弁護士に相談に来るケースが多いようです。

まずは弁護士に間に入ってもらって相手に刑事告訴をちらつかせて警告を出し、それでもその警告に従わない場合は警察に相談に行くというワンクッション方式をとることで、リベンジポルノをこれから流出させようとしている者を思いとどまらせたり、既にWEB上にアップロードしてしまった画像や動画を削除させたりすることを、事を荒立てずに促すことができます。

また、仮に加害者が削除に応じなかった場合でも、弁護士であれば様々な方法でそれらを削除することができます。

ネットに拡散された裸の画像等を削除するには幾つかの手法がありますが、ネットやパソコンに詳しくない方ですと自分でその手続きができなかったり、法的な削除手続きですと弁護士が介入せざるを得ません。

ネットの誹謗中傷の書き込みを削除する7つの全手順を徹底解説!に削除方法をできるだけ詳しく説明していますが、もし自分では難しそう…と挫折してしまったら、お気軽に当弁護士事務所までご相談下さい。

3.セーフラインに相談する

この団体は、ヤフー株式会社をはじめとするインターネット企業が集まって運営される一般社団法人セーファーインターネット協会が運営しています。

リベンジポルノの相談だけでなく、ネットの一般ユーザーから違法・有害情報の提供を受け、警察やインターネットホットラインセンターに通報する活動等も行っています。

4.性犯罪被害110番に相談する

各都道府県警察署で、性犯罪の被害専門の相談窓口が設置されています。

最寄の警察署に直接電話しても良いのですが、性犯罪は被害者が女性であることが多く人に話しづらい内容であるため、この窓口では原則、女性相談員を置いております。

参考:性犯罪被害相談電話設置一覧表