インターネットには個人が開設しているブログやSNSなどいろいろなテーマの掲示板が無数にありますが、全く知らない人からこれらのツールを使って誹謗中傷されることがあります。

誹謗中傷の投稿がされたとき、それを放置しておくと知らないうちにどんどん拡散されてしまいます。典型的な例としては、ショップ店員が来店した芸能人の情報をツイートした人が本名、住所などの個人情報を特定されて拡散されるケースなどです。
ことの発端は本人にあったとしても、個人情報を特定されて誹謗中傷のコメントとともに拡散されればその後どんな犯罪に巻き込まれるかわかりません。

対策として最も急がれるのが、そのような誹謗中傷投稿の削除です。名誉毀損で刑事告訴したい・慰謝料を請求したい場合も、まずは投稿を削除してこれ以上誹謗中傷の被害が広がることを防ぎましょう。
今回は、ネット上の誹謗中傷に関する書き込みや投稿を削除する手順について整理しています。

削除の方法としては、サイトの管理者(コンテンツプロバイダ)に投稿の削除依頼をする、または投稿者を特定して自分で本人に削除依頼をするかのどちらかになります。まずはサイトの管理者への削除依頼の方法を確認します。

サイトの管理者にネット上の誹謗中傷投稿を削除要請する

掲示板やSNS、ブログなどは、そのサービスを提供しているサイトの管理者がいます。コンテンツプロバイダという言い方もします。管理者に対して誹謗中傷にあたる投稿により自分が被害を受けていることを伝えて投稿の削除を要求する方法があります。

この方法ですと投稿者と直接対応する必要がなく、また投稿者の個人情報を特定する必要もありませんので、手間も心理的負担も比較的軽く済みます。

無料ブログやSNSサービスの場合

アメブロやFC2などの無料ブログ、ブログやSNSにはそれぞれ利用規約が設けられています。そのサービスの利用者は利用規約に同意したことになりますが、利用規約では誹謗中傷にあたる投稿を禁じていることが殆どです。

例えばツイッターの利用規約には、嫌がらせやヘイト行為などの攻撃的な行為を禁じ、それに反したアカウントはロックまたは永久凍結するという決まりを設けて対応しています。

合わせて問い合わせフォームやヘルプなど、運営会社にアクセスを取れたり、そのサイトの管理に関して何かしらの要望ができたりするような窓口の中に削除依頼の連絡先なども含まれていることが多いため、もしも同じサイトの利用者から誹謗中傷を受けた時には直接管理者に投稿の削除を依頼して対応してもらうことになります。

この方法はツイッターを始めmixiなどのSNSやアメーバブログなどの無料ブログなどで使える方法です。それぞれの詳しい削除の方法については、個別の記事を参照してください。
リンク:個別の削除対応記事

独自ドメインで運営されているサイトの場合

もしも誹謗中傷しているサイトやブログがワードプレスや個人サイトなどの独自のドメインを持っている場合、基本的には無料ブログやSNSサービスへの対応と同じですが、管理者や運営者はレンタルサーバー(ホスティングサーバ)会社となります。

例えば、ロリポップやXサーバー、さくらインターネットなどがこのホスティングサーバにあたります。この場合、まずは誹謗中傷を行っている人がどのホスティングサーバを利用しているのかを明らかにする必要があります。

レンタルサーバー(ホスティングサーバ)の特定方法ですが、URLを入れるとそのドメインの情報について表示してくれるサービスがあるのでこれを利用すると簡単です。ここにドメイン名などを入れて検索するとIPアドレスやドメインの所有者の情報が表示されます。

表示されたIPアドレスで再検索すると、契約しているサーバー会社がわかりますので、サーバ会社に誹謗中傷の事実を連絡して削除依頼をすることができます。
ドメイン情報を検索できるサイト例

管理者へネット誹謗中傷投稿を削除依頼する具体的方法

では実際に削除依頼する手順を見ていきましょう。方法としては、管理者のサイトが設置している問い合わせフォームやメールを通じて削除依頼をする方法と、書面を作成して郵送して削除依頼する方法があります。

問い合わせフォームやメールから削除依頼する

先ほども触れましたが、無料ブログやレンタルサーバなどの管理会社は「問い合わせフォーム」や「ヘルプ」などのページと合わせて規約違反の投稿について通報する専用窓口を設置しているところが多いため、通常はこのメールフォームなどを通じて誹謗中傷の投稿の削除依頼を行います。

しかし中にはこういった誹謗中傷の対応窓口をオンライン上に用意していない管理会社もあります。この場合は、削除依頼は郵送で行わなければなりません。

削除依頼書の書式を作成して郵送(送信防止措置依頼)

削除依頼書の作成からの流れ

郵送で削除依頼を行うときには、書式を自分で作成しなければなりません。管理者はそれを受け取った後、削除の対応を取ることになります。

運営者が判断して削除することが難しい場合は、誹謗中傷の書き込みを行ったサイトやブログの作成者に運営者がコンタクトを取り、削除しても問題ないかを照会します。このとき、相手が反論しなければおおむね7日以内に削除という流れになります。

投稿削除の書式「送信防止措置依頼書」

投稿削除の手順や方法は、プロバイダ責任制限法に関連するガイドラインに基づいて規定されています。プロバイダ責任制限法のガイドラインを作成しているテレコムサービスでは、誹謗中傷の削除依頼のための書式を用意していますので、この書式を利用して削除依頼を行いましょう。

削除依頼の手続きは正式には「送信防止措置手続き」と呼びます。こちらのサイトではプロバイダ責任制限法に関する情報を閲覧できるのに加えて、送信防止措置依頼書式のダウンロードもできます。

プロバイダ責任制限法関連情報webサイト

また、送信防止措置依頼書の詳しい書き方については(リンク:「送信防止措置依頼書や海自請求書の書き方(タイトル未定)」に詳しく記載しているので参考にしてください。

注意!削除依頼が必ず通るとは限らない

無料ブログやSNSの管理者、レンタルサーバーの運営会社に送信防止措置依頼を行ったとしても、実は削除するかどうかの判断は運営会社の任意です。そのため削除依頼者が希望する対応をされないケースも少なくありません。

その場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てる方法が考えられます。削除の仮処分については別の項で詳しく解説します。

自分で誹謗中傷の投稿者を特定して削除請求する

相手の情報がわかっている場合や、特定はまだできていないが慰謝料の請求や刑事告訴を考えているような場合には、自分で投稿者を特定して削除請求を行う方法もあります。
この場合はホスティングサーバの運営会社やサイトの管理者に削除要請をするよりも少し手間がかかります。手順を見ていきましょう。

まずは投稿者を特定する(情報開示請求)

ネットの誹謗中傷ではアカウントやIDで誹謗中傷の投稿をされることが多いため、ほとんどのケースでは誹謗中傷の投稿者について本名や住所など、個人情報を知りません。そのため、まずは投稿者を特定する必要があります。
誹謗中傷している投稿者を特定するためには、プロバイダ責任制限法に基づいて情報開示請求を行います。

インターネットの仕組みと情報開示請求の流れ

家にインターネットを引いてブログやSNSを楽しむとき、まずはNTTやWiMAXなどのインターネット回線会社と契約し、さらにSo-netやニフティ、OCNなどのプロバイダ(インターネットサービスプロバイダ・ISPと呼びます)と契約することでインターネットを利用できることになります。

インターネットが使える環境が整ったら、ツイッターやブログなどいろいろなサービスを利用することになります。ちなみにツイッターや無料ブログの運営会社のこともプロバイダと呼ぶことがありますが、この場合はコンテンツプロバイダといってISPとは区別されます。

まずツイッターなど、誹謗中傷の書き込みがなされているコンテンツプロバイダに対してIPアドレスの開示請求を行い、それを持ってインターネットサービスプロバイダに情報開示請求を行います。

利用者は契約時にインターネットサービスプロバイダに対して本名や住所などの個人情報を提供しています。契約後にプロバイダから利用者にはIPアドレスを割り振られていますが、まずは誹謗中傷がどのコンテンツでどんなIPアドレスからなされたのかを特定しなければなりません。次に具体的な情報開示の手順を確認しましょう。

注意!ログの保存請求を忘れない

IPアドレスがわかっても、インターネットサービスプロバイダが通信記録(ログ)を残していなければ投稿者を特定することができません。
しかしこの通信記録は3ヶ月〜6ヶ月で自動的に削除されることが多いため、ISPに対しては発信者情報開示請求と合わせて「ログの保存請求」を行う必要があります。

なお、ログの保存請求についても裁判所の仮処分を申立てることが可能です。

誹謗中傷の投稿者について発信者情報開示請求を行う手順

コンテンツプロバイダにIPアドレス開示を請求する

コンテンツプロバイダに開示を求める情報は、IPアドレスであると書きました。正確にはIPアドレスに加えて、誹謗中傷の書き込みが行われた時間(タイムスタンプ)の開示も請求します。

誹謗中傷が書き込まれた時間に誰にどんなIPアドレスが割り振られていたのかを知ることによって、そのIPアドレスを使用している人がどんなインターネットサービスプロバイダを利用しているのかを特定できます。

これは、先ほど書いた削除依頼の手順と同じく、オンライン上に対応窓口があればそこを通じて行います。
コンテンツプロバイダの対応の流れも同じで、プロバイダ責任制限法に則って、開示請求を受けたコンテンツプロバイダ(サイト管理者)が書き込みを行った人に対して情報開示を許可するかの照会をおこないます。

ただ、誹謗中傷を行った投稿者の連絡先がわからないなどの事情があればこの照会手続きは省かれることもあります。あくまで照会は任意のものです。
ちなみに誹謗中傷の投稿をした人には、この情報開示の照会が突然来ることになります。情報開示を拒んだとしても、自分がしたことの重大さに気づいて自発的に投稿を削除する効果も期待できます。

郵送の場合は「発信者情報開示請求書」を作成

コンテンツプロバイダが専用の問い合わせフォームを用意していない場合は、削除依頼のときと同様にコンテンツプロバイダに対して郵送でIPアドレスの開示請求を行います。こちらもテレコムサービスが書式を作成しているので、それを使って行いましょう。

詳しい書き方は(リンク:「送信防止措置依頼書や開示請求書の書き方(タイトル未定)」を参照してください。

プロバイダに発信者情報開示請求書を郵送する

IPアドレスが特定でき、インターネットサービスプロバイダがわかったら、ISPに対して発信者情報開示請求を行います。

無料ブログやSNSの場合

コンテンツプロバイダやレンタルサーバーでは、発信者情報開示請求について郵送での受付を行っているところが少なくありません。発信者情報は本名や住所などの重要な個人情報ですので、手続きもしっかりとしたものである必要があるからです。

プロバイダ責任制限法のガイドラインを作成しているテレコムサービスでは、発信者情報開示請求書の書面も作成し、公開しています。この書面を利用して情報開示請求書を作成しましょう。

このとき、請求書以外に公的な身分証明書のコピーや印鑑証明書の添付を求められることが多いため、必要な書類についてはしっかりと確認してください。

発信者情報開示請求書書式

こちらも詳しい書き方を(リンク:「送信防止措置依頼書や海自請求書の書き方(タイトル未定)」に記載していますので、合わせて参照してみてください。

独自ドメインの場合

情報開示はプロバイダ責任制限法に基づく利用者の権利とされています。独自ドメインを取得して、レンタルサーバ(ホスティングサーバ)を経由してサイトやブログを作っている投稿者に対しては、ISP以外にレンタルサーバー会社に情報開示請求する方法もあります。判例でもレンタルサーバー会社に対して発信者情報の開示が認められました。

レンタルサーバー会社によってはしっかりと手続きについて明記しているところもあります。独自ドメインサイトのIPアドレスから利用しているレンタルサーバー会社を割り出したら、そのレンタルサーバー会社の運営サイトに飛んで具体的な手続きについて確認してみてください。

運営会社側が開示請求に応じてくれることは少ない

このように印鑑証明書などを用意して情報開示請求を行ったとしても、本名や住所などは重要な個人情報ですので、必ずしも開示されるわけではありません。
管理者らが情報開示に応じてくれなかった場合には、裁判上で開示請求の手続きを取るという選択肢があります。それが開示の仮処分です。

削除依頼や開示請求に応じてくれないときは仮処分の申立てを

仮処分とは

ネットの誹謗中傷にあたる書き込みに対してプロバイダなどが削除依頼や発信者情報開示請求に応じてくれないとき、裁判所に処分を申し立てることができます。

ネット上の誹謗中傷や名誉毀損は放置するとさらに被害が拡大し、誹謗中傷された人や法人に大きな不利益を与えかねません。そのため、誹謗中傷や名誉毀損を受けている人の利益を保護するために暫定的に行う保全措置が仮処分です。

仮処分のメリットはなんといっても対処が早いこと。もしも通常の裁判を起こしたとすれば、誹謗中傷の投稿削除についての判決が出るには通常半年以上かかってしまいます。しかし、仮処分であれば数週間から数カ月で仮処分の決定が下されるのです。

ネットの誹謗中傷は迅速な対応が不可欠ですので、通常の裁判手続きを踏むよりも仮処分の申し立てを選びましょう。ちなみに、慰謝料や損害賠償を請求するための訴訟は仮処分後でも起こすことができます。

ネットの誹謗中傷に関する仮処分として、削除の仮処分と開示請求の仮処分、開示請求と並行して行うログ保存の仮処分があります。

仮処分の流れ

まず管轄の地方裁判所に仮処分の申し立てを行います。申立書には、被保全権利と保全の必要性という内容を記載しなければなりません。

非保全権利とは、誹謗中傷によって侵害されている権利のことです。許可なく撮影された自分の写真が無断で使用されているならば肖像権となりますし、本名や自宅住所などが勝手に公開されているならばプライバシー権です。
このように、誹謗中傷の事件ごとにどんな権利が侵害されているのかを明らかにする必要があります。

保全の必要性とは、その権利を守らなければどんな不都合が生じるのかということです。例えば、インターネット上で自分のプライベートな情報が公開され続けることにより、閲覧者が増大して不利益が拡大するといったようなことが挙げられます。

申し立てが受理されると裁判所で審尋が行われます。弁護士に依頼している場合は弁護士が裁判所に出向けば済みますが、自力で仮処分の申立てをするならば自分で出向かなければなりません。
審尋では事件についてさらに詳しく突っ込んで質問されたり、資料が不十分だと判断されれば追加で提出することを求められたりします(補正)と言います。

審尋は誹謗中傷をした投稿者に対しても行われ、双方の主張を聞き入れた上で裁判所が仮処分の命令を出すかどうかを判断します。

仮処分には保証金が必要

仮処分の申立て命令を出してもらうためには、裁判所に保証金を支払う必要があります。保証金は担保の役割を持ちます。

仮に誹謗中傷による投稿だとして書き込みの削除命令を裁判所が出したとき、それが実は誹謗中傷でもなんでもなければ逆に投稿者に損害を与える可能性があります。
もしもそうなった場合、投稿者は削除要請をしてきた人に対して損害賠償請求することが考えられます。その損害賠償請求権の担保として保証金が使われるしくみです。

保証金が必要かどうかはケースによって異なりますが、通常は数十万円程度の保証金が必要とされるケースが多いものです。ちなみにこの保証金は後ほど手続きをすれば返ってきます。

仮処分は弁護士に依頼するメリットが大きい

仮処分申立書を作成するときには、侵害されていて保全されるべき権利についてや保全の必要性について、説得力をもった書面を作成する必要がありました。
またネットの誹謗中傷という特性から、できるだけ迅速に仮処分の命令を出してもらわなければなりません。そのために十分な資料を添付したり、その後の審尋で裁判所に誹謗中傷による不利益の重大さについても納得させる必要があります。

弁護士に依頼することで費用はかかりますが、仮処分の第一の目的が誹謗中傷による被害をこれ以上拡大しないことだとするなら、弁護士に依頼するメリットが大きい手続きの一つです。

ネットの誹謗中傷に対する削除要請や情報開示請求は弁護士に依頼を

ネット上の誹謗中傷投稿に対して、投稿の削除を求める対策法について解説しました。投稿の削除方法にはいくつかあり、管理者に削除依頼をかける方法・投稿者を特定して直接削除要請をする方法がありました。

直接投稿者に削除要請をする場合には、その前に投稿者を特定しなければなりません。また、削除依頼や発信者情報開示請求をしてもそれに応じるかどうかは基本的には管理者やプロバイダの判断に委ねられます。

もしも管理者らに希望している対応をしてもらえなかった場合には、裁判所に仮処分の申し立てをして削除依頼や情報開示を要求していくことになります。

このように、単に投稿を削除してもらえればいいだけなのに、その手続きはかなり煩雑です。これは相手にも一定の権利が認められるからなのですが、その中でいかに要点を掴んで迅速に手続きを進められるかは、法律だけではなくITトラブルについて精通していること・経験豊富であることが大きく影響してきます。

ネット上の誹謗中傷投稿を放置しておくと、どんどん拡大して大きな不利益を被ります。閲覧者を一刻も早く減らすことが対策の第一目的です。弁護士に依頼するかどうか迷ったときにはその点を念頭において判断することをお勧めします。